ビジョナリーカンパニー

仕事や人生の方向性が見えてきたときの、方向性の確立と集客の考え方

方向性の確立 コーチング

設立1~3年目の経営者が自社の方向性を確立するためのステップ

私がみなさんに申し上げているのは、まずファウンデーションを築くということです。ファウンデーションは、組織の基礎となるもの。自分たちが何のために存在しているのか、何のために企業活動をしているのか、何をもたらしたいのか……。目的と自分たちの存在意義を明確にします。

明確になった目的や存在意義は、さらに考えて深めることがあっても、揺らいではならないものですから、常に心に留めておきましょう。企業の中には、経営理念や行動指針、ビジョン、ミッションなどを張り出しているところも。

これは、経営理念などを思い出させる、再認識させるためのツールのひとつといえます。リモートワークであれば、PCを立ち上げたときに表れたりするような設定になっていればハナマル。視覚によるリマインドですね。

ファウンデーションと同時にもうひとつ、設定していただきたいものが。それが、BHAG(ビーヘグ)です。BHAGについては、「ビジネスをスケールアップさせるための組織や事業のつくりかた」でお話ししていますので、そちらもご覧いただきつつ、ここでは方向性の確立という観点から、なぜBHAGが必要なのかを紐解きます。

BHAGは、遠くにある旗のようなもの。ただし、その旗を立てるだけ、つまりBHAGを設定するだけではなく、チーム全員の視界に入る、認識できるようにしましょう。それは、どこに向かっていくのか、目指す先が見えている状態であり、皆で同じ方向が向けるということになります。

方向性を見失う要因と、見失ったままの企業の行く末

起業から1年、2年と経つうちに、目的や存在意義を見失うことや揺らぐことは少なくありません。揺らぎがちなのは、往々にして事業がうまくいっていないとき。自分たちが望んでいることではない依頼に対応しようとしたり、当初思っていたとおりに物事が進んでいなかったり。

もちろん当面のキャッシュは必要です。また、望んでいない依頼に対応することで、自分たちの仕事の幅やサービス内容を広げる可能性も。でも、それが自分たちの存在意義や、自分たちが世の中に提供したいと考えているものとマッチしていなければ、ズレが生じます。

だからこそ、ファウンデーションを築き、明確にし、自分たちのすること、これからやろうとしていることがそれに沿っているか、常に照らし合わせなければなりません

たとえば、地盤や土台をしっかり築かないままに建物を建てたら、崩れてしまうこともあります。組織もそれと同じ。最初に述べたとおり、ファウンデーションは組織の基礎です。基礎がなかったり、揺らいでいたり、見失ったまま上積みだけしていくと、揺らぎの幅がどんどん大きくなり、やがて立ち行かなくなる。十分にありうることです。

自社の強みを明確にするための戦略や手法

目標や目的、存在意義を考える上で、自分たちの強みは重要なファクター。それを明確にするものとして、「ヘッジホッグ」という概念があります。ヘッジホッグとはハリネズミのこと。ハリネズミはゴールに向かって着実に淡々と進み、望むものを得るというたとえから、ハリネズミ概念(ヘッジホッグ・コンセプト)と言われています。

古代ギリシャの寓話に、「キツネはたくさんのことを知っている。ハリネズミは大切なことをひとつだけ知っている」というものがあります。賢く様々な戦略を立ててハリネズミを捕獲しようとするキツネに対し、ハリネズミがすることはいつも体を丸めるだけ。でも、キツネはハリネズミを捕獲できず、勝つのはいつもハリネズミ。ハリネズミの概念は、そんな寓話に基づいています。

ハリネズミになるために、次の3つの問いへの答えを考えてみましょう。

  1. 自分たちが世界一になれるものは?
  2. 自分たちが情熱を持って取り組めることは?
  3. 経済的な原動力になるものは?

1は、現時点で一番でなくてもかまいません。一番になろうとしているものです。これなら負けないというもの、自分たちが長けているもの、得意なものはなんですか?

2は、最も情熱を捧げていることです。たとえば、病院であれば、新しい治療を見出すことなのか、最新の治療をどんどん取り入れるのか、患者の希望を最優先にするのか。どこに情熱を傾けているかをクリアにしましょう。

3は、商品やサービスなど、何によってキャッシュを得るかです。どの数字を1%上げたら、ビジネスに劇的な影響をもたらすことができるか。ビジネスを飛躍させるカギとなる指標を見つけることが、ポイントです。

この3つの融合が自社の戦い方であり、3つの答えは自社の圧倒的強み。圧倒的強みは自社と他社の差別化につながります。2で病院を例にしましたが、自分が患者だったら……と考えてみてください。最新の治療が受けたいのか、自分の希望を最優先にしてほしいのか、病院を選ぶ基準にもなります。

3つの問いの答えを出すことは簡単に思えますが、実はとても難しい。2日を要して当たり前なほど。でも、それくらいかけてじっくり考えていただきたいのです。なぜなら、これもファウンデーションと同じく、組織の基礎だから。そして、導き出されたものは、言語化を。

【事例】ファウンデーションを全方位に徹底した結果

いずれは独立したいと考えていた、勤務医のMさん。独立するため、経営を学び、MBAを取得するなど、しっかりした考えをお持ちの医師でした。ただ、残念ながら勤務している病院の長とは意見が合わず。物申すも制され、ついに独立に踏み切ることに。

そこから、存在意義を考え、その存在意義を具体化するために掲げる行動指針を考え、基礎を固めることに1か月以上を費やしたでしょうか。ファウンデーションを徹底して築いたことで、晴れて開院したのちは右肩上がり。Mさんと看護師、事務担当者の3人でスタートしたものの手が回らず、半年で増員することになります。

採用の際も、ファウンデーションを大切に、それをどう伝えるかに注力して進めました。組織の発展において、人はとても重要です。しかし、病院だけでなく一般企業でも創業してすぐの時期は、まだ世間に認知されていない状態ですから、なかなかいい人材に巡り会えません。そんな中ですべきは、自分たちが誰であるのかを丁寧に説明すること。

それを怠らなかったMさんは、良き人材と出会え、2年目を迎える今ではスタート時の3倍にメンバーが増え、来年はさらに増やさなければ……という状態です。

Mさんが立ち上げたのは在宅診療所で、地域のケアマネージャーさんにも自分たちのファウンデーションをしっかり伝えています。また、理念(ミッション)や目指すところ(ビジョン)、職員の行動指針(クレド)をウェブサイトで発信。内にも外にも、ファウンデーションを徹底、浸透させています。

企業の成長を促進し、競争力を高めるための支援

ここまでお伝えした考え方は、ビル・コリンズが著した『ビジョナリー・カンパニー』の一連のシリーズによるものです。彼が提唱する『ビジョナリー・カンパニー』によるコーチングスタイルがあり、私もそれに基づいて支援を行っています。

たとえば、差別化のマッピングをしたり、ロードマップを作成したり。ロードマップの作成には、これまでお話ししてきたファウンデーション、BHAGが必要で、そこから顧客層やプロミス、利益の出し方、四半期・1年・3年といった期間ごとの戦略を考えます。

ファウンデーションは変わらないものですが、それ以外の顧客層などは変わる可能性が。たとえば、コロナ禍ではオンラインショッピングの需要が増しました。それをふまえて顧客層を見直さなければならないかもしれません。だから、常に見返し、このままで大丈夫なのかを考えながら進めていくことが必要です。

これらの支援は、差別化がうまくできていない、売上が伸び悩んでいる、たとえば支店を出す場所といった課題を感じている方にもおすすめ。経営者の方おひとりでも受けられますし、チームのメンバーが増えた時点ではグループワークショップを推奨しています。

コーチの視点で考える、設立1~3年目の経営者にとって重要なこと

繰り返しになりますが、重要なのは自分たちの存在意義。なぜ存在しているのか、どんなことを世の中にもたらしたいのか。そして、BHAGは大胆に設定していただきたいなと思います。

誘惑はいろいろあっても、自分たちが設定したファウンデーションからぶれない。これが簡単に思えて難しいので、常に意識していてほしいですね。いろいろなクライアントさんを見ていても、それができているところは非常に強い組織として成長していますから。せっかく創業なさった会社です。ぶれないファウンデーション創りがポイントであることを、ぜひ覚えていてください。

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