ビジョナリーカンパニー

ビジネスをスケールアップさせるための組織や事業のつくりかた

スケールアップ 組織や事業

スケールアップに立ちはだかる最大の壁

経営者が組織やビジネスをスケールアップさせようとしたとき、多くがぶつかる壁があります。最大の壁は、どのように戦略を作っていくか。戦略とは、差別化や経営者自身が目指す方向、資金、人材など。その中でも、人材。これが大きな課題です。今回は、スケールアップ時の課題を解決する方法や事例を紹介します。

経営者のビジョンは明確ですか?

課題を解決するには、スキルや知識の前にまずビジョンを明確にしましょう。どういうビジョンで組織を作り、進んでいき、どこに向かいたいのか。これが抜けてしまうと、いくらスキルや知識を身につけても、前に進まないことが多いのです。

実際にセッションをする中で、ビジョンを見失っている経営者は多いと感じています。特に第二創業期。創業したときは勢いでうまく進んだものの、徐々に環境も変化し、人も増え……。そんな中で、事業を立ち上げたときの“Why”を見失ってしまう、揺らいでしまうのです。

なぜその事業を始めたのか。見失ってしまったその“Why”を明確にするために必要な力が自己マネジメント力と俯瞰力であり、それらを鍛えるひとつの手がコーチングです。

第二創業期は経営者の自己マネジメントが重要なとき

俯瞰力を身につけること、また特に第二創業期で状況の変化が著しいときの自己マネジメントは、非常に難しいもの。

日頃の業務に忙殺されているという場合もありますが、想定以外のことが起きている場合には、自分の考えるとおりになっていない現状を受け入れられないことも。頭では理解していて受け入れようとします。しかし、心がそうはならないのです。頭の中と心が整理しきれないことによって俯瞰できなくなります。

コーチは、自分を違った方向から見るためにお手伝いをする存在。最初のビジョンやなぜその事業をやろうと思ったのか、やろうと思っているのかといった“Why”、それを考える問いをコーチは投げかけます。自己マネジメントがうまくいかないときは、ぜひコーチの力を借りてください。

シナジーが期待できるチームをどう作るか

スケールアップを図ろうとするとき、自己マネジメントと同時に人をマネジメントすることも重要です。最初に述べたように、スケールアップの大きな課題は人材ですから。

そのために、チームメンバーにも“Why”を考えてもらいます。なぜその事業をしているのか、なぜそれが重要なのか、といった“Why”です。コーチがこれを考える問いを投げかける場は、チームメンバーだけだったり、経営者と一緒だったり、臨機応変に設定します。

そして、もうひとつ必要で重要なことは、ゴールの共有。ゴール=BHAG(びーへぐ)です。BHAGとは、Big Hairy Audacious Goalの略で、「とてつもなく大きく、身の毛もよだつような大胆なゴール」を意味し、人々の意欲を引き出して心を動かす、社運をかけたダイナミックな目標のことです。

社運を賭けたダイナミックな目標(BHAG)を立てる

半年後、1年後に届きそうだなというところから3〜5年の目標を、多くの方は設定します。BHAGは、その先。今いるところからはギリギリ見える。でも、雲の上を飛んでいかなければ届かないのでは……と思えるほど先。それでも、BHAGがあり、さらにそれが共有されていることで「行きたいよね」、「なんかワクワクするよね」とチームメンバーが思える。そこがポイントです。

機械を購入したら、決まった数だけ製品を製造してくれます。例えば、10個ならほぼ必ず10個製造してくれる。しかし、人を採用した場合は、30個の可能性も3万個の可能性も。逆に、製造されるはずのものがされないばかりではなく、全部壊してしまうこともあります。

その差は、“Why”やBHAGを共有し、共に具体的戦略を考え、その過程において信頼が構築されているかどうか。信頼を構築し、シナジーが期待できるチームをいかに作れるかが大切。そんな組織作りに欠かせないのは心理的安全性ですが、それについてはこれまでのブログでお話ししていますので、そちらをご覧ください。

心理的ストレスや困難を克服するために

何かを成そうとするときにストレスや困難はつきもの。可能な限りストレスを軽減し、困難を乗り越えるには、自分のブレない軸を作りましょう。

他者を巻き込み、チームを信じなければ、スケールアップはかないません。その支えとなるのが、ブレない自分。そして、自分を信じることです。これが簡単なようで、実は難しい。だから、心理的ストレスを感じてしまうのです。

では、自分のブレない軸をどのように作っていけばいいのでしょう。非常に有効な手段の一つは、マインドフルネスです。

何か起こる前にマインドフルネスを取り入れる

スケールアップを図る経営者には困難が訪れる前に、自分の軸を作ることやマインドフルネスについてお話をします。でも、困難がやってくる前には、そういった話が入っていかないことのほうが多く、何かがあってから「そういえば」といったように思い出される方が多いのが実情です。

みなさんが日々を過ごす中で、頭では常に「先週、送ったメールは……」とか「あの時に、こう言っておけばよかった」といったような過去のことを思ったり、「来年度の予算、達成できるかな」「どうやってプレゼンしたら成果が出るだろうか」など未来を考えていたりが繰り返されています。

その状態は、体だけが今現在にある状態。体はあるのに頭がなく、今現在何が起きているのかを見ているようで見ていないのです。今現在に体も頭もいればこそ、厳しい現実に向き合う、この人とこういうコミュニケーションを取る、指示を出す、戦略を切り替えるといったことが見極められます。

マインドフルネスとは、“今”を意識し、意識を“今”に向けること。今、ここにいるからこそ、自分自身を俯瞰で見ることもできます。俯瞰できないのは、今ここにいないからともいえるでしょう。

今、ここにいる人の言葉は非常に強いもの。チームメンバーを巻き込める可能性は、圧倒的に高くなります。

急成長する中でコーチングを受け、売上が3倍に

急成長するIT企業のCTOであるLさん。創業から2年ほどの時期にコーチングを始めました。

創業後、あっという間にメンバーが増えました。CEOとCTOの考えがなかなか全員に浸透しない状態でしたが、チームメンバーを高い視座に持っていくこと、かつ自らも経営者としてレベルアップが必要であり、どうチームを作って事業成長していくのか、それらが課題だと感じていました。

しかし、課題だと感じてはいても明確ではなく、自分自身が実はよくわかっていなかった。「目指している高い視座ってなんだったんだっけ?」というような状態です。

コーチングを受けることで、Lさんの中で“Why”が曖昧だったという気づきが。また、CTOは批判も受ける立場だけれども、それは批判ではなく意見を言ってくれているのだという見方になりました。そうして、完全に目先5cmくらいしか見えていない状況から、見える範囲が5cmから10cm、さらに5mくらいに。

明確になった“Why”とゴールはメンバーとも共有しました。それにより、コーチングを始める前は35%近かった会社の離職率も、低い数値で安定。加えて、マネージャーも育成しました。メンバーはさらに増えていますから、CEOとCTOの2人で全員は見られません。Cレベルの代弁者となれる人の必要性を覚え、4人のマネージャーを育てたのです。

コーチングを始めて10か月。Lさんは、チームでゴールに向かえる楽しさに気づき、CEOとは話さなくてもわかっているという思い込みや批判されたくないという思いを手放し、メンバーのコーチングも導入し……。

丁寧にセッションを続ける中で、いろいろ手放したり、取り入れたり。それができたのは、Lさんが非常にコーチャブルだったから。その結果、メンバーはコーチング開始当初の倍以上、売上は3倍になりました。

スケールアップに成功する経営者の共通点

Lさんの事例からも見てとれますが、スケールアップに成功した経営者には共通点があります。

自分を信じる力があること。ただし、しなやかさも重要
「自分が絶対」では、強い向かい風が吹いたときにポキッと折れて再生不能になることも。大切なのは、エゴを押し通さず、他者の言葉を受け入れられる強靭さです。
■“Why”を常に明確にしていて、世の中にどんな貢献をしたたいかも明確
明確な“Why”とゴールはメンバーと共有します。
■コーチャブル
コーチャブルとは、他者の話を聞いてみる、誠実かつ謙虚で、学ぶ姿勢があること。コーチが投げかけた問いに対して答えながら、違う視点をもち、自分の枠を大きく広げることができる。

そういった姿勢をみなさんお持ちです。

目標は必ず達成できる

なぜその事業をやりたいのか。それがはっきりすれば、必ず目標は達成できると私は信じています。

“Why”は、経営者の方の自己確信にもつながってくるものですから、一度じっくり考えてみてはいかがでしょうか。それを考える時間は、何よりも大きな投資になるはず。もちろん、リターンが見込める投資です。ぜひ自分に向き合う、その時間を作ってみてください。応援しています!

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