部下が上司にSOSを出せない理由
部下が何かに困ったとき、あるいは何かが「できない」と思ったとき、「できない」というSOSを上司である皆さんは受け取っていますか? あるいは、部下が困っていることがあるのがわかっていて、プロジェクトに致命的なミスが発覚してしばらく経つにも関わらず、上司が部下に指摘しなければならない状況になってしまう。そんな事態になった方はいますか?
「あのとき部下が先に言ってくれればよかったのに」と思うかもしれませんが、ひょっとしたら部下があなたに「言える環境ではない」という可能性はありませんか。
言えなかった環境というのは、言えるような関係性を作れていなかったのかもしれません。そんなふうに考えていただくと、部下を責めるのではなく、上司であるご自分自身がどんな関係性を作ることができるかという視点で、この状況をとらえ直すことができると思います。
部下が上司である自分になぜ言えないのかを考えていただくと、そもそもご自分自身が、ひょっとしたらですよ、知らない間に何か高圧的な言動をしているかもしれません。また、困っていることを部下同士では話せても、解決のための行動に踏み出せなかったのかもしれません。
あるいは、これはあまりあってはいけないのですが、たまにあるのが、直属の上司に相談するのが憚られる場合です。「こんなこと言ったら上司に怒られるかもしれない」と怯え、直属の上司を飛び越えて、上司の上役に相談をしてしまうこともあります。
上司と部下の間に作りたい心理的安全性
考えていただきたいのは、ご自分自身が上司として部下とどんな関係性を作っているかです。部下が困ったときに「困った」と言えて、できないことが起きたときに「できない」と上司であるご自身に言える関係性を作れていますか。
言える関係性ができている環境を「心理的安全性」と言います。この言葉は最近いろんなところで聞く機会が増えています。心理的安全性が担保されていると、部下が上司に「困った」「できない」「どうしたらいいんだろう」を言える関係性や言える場があり、“心理的安全性が保たれている”と言えます。
上司であるご自身に対し部下が「困った」「できない」「どうしたらいいんだろう」が言えないなら、心理的安全性が担保されていないことに今気づいていただき、ご自身を振り返るきっかけにしていただけたらと思います。
心理的安全性を作るために上司ができること
必要なのは、「困った」「できない」「どうしたらいいんだろう」が言える関係性を部下の間に作るために、“信頼の貯金”を日々積みあげることです。
その第一歩が部下の意見や話を聴く時間を日々持つことです。この場合の「聴く」は、「傾聴する」「耳を傾けて聞く」の意味を持つ「聴く」の漢字を使います。
「傾聴」という漢字を思い浮かべてください。耳偏(みみへん)がありますよね。つくりは「十」の「目」が横になっています。十の目で心を持って聞く。この漢字が表す聴く姿勢を持つことが、心理的安全性を作ってくれることになります。
日々話を聴く姿勢を取ることで、部下はちゃんと上司が「支えてくれている」「わかってくれている」「見守ってくれている」「サポートしてくれている」と伝わります。上司のこういった姿勢は、部下の「私は何のためにがんばってるんでしたっけ?」というモチベーションを失うような思考に陥りにくくなりますし、チームで成果を作ることに意識や気持ちを集中できるようになります。
「なんでこの人と今一緒にいるんだっけ?」
部下にとってご自分の取り組みがどうチームに繋がるのか、「自分はこういう人に支えられているんだ」「一緒にやっているんだ」という思いを感じたり、実感できる機会はとても重要です。それがないとチーム意識や仲間意識も持てませんし、最初はあっても次第にすり減ります。
同時に、部下自身のモチベーションも下がり、「なんでここでこの人(上司)と今一緒にいるんだろう?」という疑問すら湧いてしまいます。
ですから、改めてご自身に問うていただきたいのは、「部下から相談を週にどのぐらいの頻度で受けますか」という問いです。
相談とは、「困った」「できない」「どうしたらいいんだろう」という気持ちの吐露も含めた部下からのコミュニケーションです。もしも回答がゼロなら、部下の方のお話を十の目で心持って聴くことを、ぜひ今日から始めてみてください。