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経営者や管理職が実践したい、組織の心理的安全性を作る4つのコツ

経営者や管理職が実践したい、組織の心理的安全性を作る4つのコツ

経営者や管理職の視点から考える心理的安全性

社員が生き生きと働け、居心地がよく活気のある職場。そんな心理的安全性のある職場では、個々人のパフォーマンスが上がって成果が出ますし、アイデアが出てイノベーションが生まれる可能性も高くなります。

それらはやがて数字として表れるでしょう。つまり、心理的安全性の確保は、経営効果につながる。これは経営者や管理職にとって大きなメリットです。この点についてはこちらの記事でまとめました。

しかし、心理的安全性は勝手にできあがるものではありません。心理的安全性は文化形成であり、育てていくものです。そのために、組織のトップに立つ人間は自分が何をすべきかを考えなければなりません。

トップは往々にして、「自分は悪くない」「自分ほど経営のことを考えている人間はいない」「自分ほど会社を愛している人はいない」といった思考になりがち。それゆえに、「社員や部下がやるべきことをしていない、できていない」に陥ります。

振り返ってみてください。例えば、毎年採用人数の半分が辞めていく、数字が伸びない、思い描いたような組織のセッションになっていない……。そんな状態であれば、現状の何かを変える必要がありますよね。

では、変わるのは社員や部下でしょうか。その前に、まずトップが自分自身を俯瞰で見て、自分自身と向き合ってみませんか?

 心理的安全性を作るコツ1:自分自身と向き合う

心理的安全性を作るコミュニケーション

心理的安全性が高い組織を作る一番の方法は、トップダウンです。トップが自己開示し、自分の中で心地のいいことも悪いことも皆と共有を。その場の一つが1on1で、昨今のトレンドのようにもなっています。

でも、間違えないで。「1on1をやるからいい上司」ではありません。上司が1on1を部下に迫るのは、最もNGな行動。そうして設けられた1on1では、部下はきっと何も話してくれないでしょう。結果、相手がしゃべらないから自分が一方的に話してしまう。それは1on1になっていません。上司というポジションに乗じて、部下の時間を奪っているだけです。

部下が話してくれないのは、何かが欠けているのでしょう。それは何だと思いますか? そんなセッションをすることがありますが、得てして欠けているのは信頼関係です。

部下からの信頼を損なう上司の態度・行動の一つが自己主張。人の話を聞かず、言いたいことだけを言う。そういった態度です。先に、トップが自己開示を、と述べましたが、自己開示と自己主張は別物。自己主張に相手は存在せず、スピーカーでアナウンスしているような状態です。

自己開示には相手が必ずいて、その相手に対して自分を開きます。また、自己主張は信頼がなくても成立しますが、信頼がなければできないのが開示。あるいは、信頼を得るために開示を重ねるのです。

 心理的安全性を作るコツ2:自己主張ではなく自己開示を

プライベートを聞くとパワハラになる!?

一方通行でも自己開示としては成立します。ただし、信頼を得ることにおいては、好ましくありません。ぜひ双方向のコミュニケーションを。そのために、自分が一つ自己開示をしたら、相手も自己開示ができるような質問をするといいですね。

難しい質問ではなく、例えば「週末にキャンプをしたんだけど、○○さんは?」でもいい。それで答えが返ってこなくても、強制してはいけません。なぜ返答がないのかを考えましょう。

「週末にキャンプをしたんだけど、○○さんは?」。これは、プライベートなことを話し、プライベートなことを聞いています。今、パワハラを防ぐトレーニングを行なっている組織も多くなっていて、そのトレーニングで習うのはプライベートに立ち入るような会話は要注意だということ。

確かにパーソナルな部分に入りすぎてはいけません。でも、上司がプライベートな話をするのは自由です。信頼を構築するとなったとき、そのきっかけを上司側が作っていく、開いていきながらも、相手の回答を想定しない。そして、「自分なら……」という幻想を手放しましょう。

週末にしたことを聞いても、スルーされるかもしれません。「そんなの関係ありませんから、本題を」などと言われてしまうこともあるでしょう。これは、そこまでの関係性だというサイン。それはそれとして真摯に受け止めてください。

信頼関係を得るために必要なのは、あなたのことをもっと知りたいんです、一緒に仕事をしていきたいんです、あなたの成長にコミットしているんです、という上司の在り方です。

 心理的安全性を作るコツ信頼関係の構築

社員や部下が対処することと経営者・管理職者がすべきこと

心理的安全性が確立されていない職場で社員ができることは、どんなものでもかまわないので自分の強みを知り、それを生かすことです。トップも社員それぞれの強みを認識し、それを組織の中でどんなふうに生かせるのか考えたいですね。

例えば、社員は1週間、1か月など期間を区切って、自分の強みが生かせる具体的なアクションプランを考える。上司は、それを考えられる問いをしてあげる。そして、強みが生かせる場面を上司がつかめたら、それを部下に伝える。

特別に機会を設けたり、ミーティングを設定したりするのではなく、都度都度伝えましょう。顔を合わせる場がなければ、ChatworkでもMessengerでもSlackでもなんでもいい。大切なのは、伝えることです。

都度都度伝えることは、対話のポイントを作ることにもなります。対話は短いものでかまいません。そのポイントを多く作ることは、トップと部下が話せる機会が増えるということ。

特別に1on1の時間を持たなくても、目的がどこにあるのか疑問を持つような定期的な会議がなくても、対話はできるのです。その対話が部下の強みを承認するものであれば、もう最強!

心理的安全性を作るコツ4:部下の強みを承認し、対話する

売上トップを牽引する部長に対し、未来を見据える本部長の英断

自分は一生懸命仕事に取り組んできた、暴言を吐かれながらも頑張ってきた、部下はぬるいという思いが強くあった、ある企業の部長・Bさん。Bさんが頑張ってきたのは事実ですし、その部署もダントツの売上を作っていました。しかし、Bさんはパワハラ気味だったのです。

Bさんの部下である社員が辞めていく、メンタルに不調をきたす社員が続出する……。そんな状況を見ていた本部長のAさんは、今は数字が出ているけれども、マイナスになる日が近いと感じていました。

そして、Aさんを通してBさんのパワハラを抑えるための取り組みをすることに。未来に向かってどうしていく必要があるのか、人材を失うことがどれだけの損失になるのかを考える時間を持ってもらいました。

Aさんは「こちらが先に変わろうよ」という方向の対話も半年ほど続けていたそう。でも、Bさんにしてみれば、「そんなことを言っても、自分のやり方で数字を作って部を支えているじゃないですか」と。「部下はわかっていない」という気持ちがあまりにも強く、結果的にAさんは英断しました。Bさんを切ったのです。Bさんの、なぜ自分が変わらなければならないんだという気持ちは変えられませんでした。

苦渋の決断をし、任命責任を感じていたAさんも、どんな人物を部長に任命するのか、そのときのポイントや一番大切にすべきことが、セッションの中で改めて見えてきたようです。

セクハラ発言!? 上司でもすぐに指摘できる環境

ある中企業の役員・Cさんは、酔うとセクハラ的な発言をする人でした。酔っているときですから本人は覚えておらず、飲み会のあとで役員に近い社員が「まずいですよ」と陰で伝えてくれていたとか。だから、なんとかしなければ、と思ったCさんは、心理的安全性を確立することに。

心理的安全性とセクハラ発言は、関係ないように思えます。しかし、心理的安全性の確立とともに信頼関係も構築され、それらが担保されていることで、発言があったその場で誰もがCさんに指摘できるようになりました。

セクハラ発言をしてしまうこと自体に関しては治療中です。あとからではなく、その場で指摘されるのですから、いわば現行犯。Cさんも自分の発言を認識できるようになり、省みていらっしゃいます。

トレーニングやワークショップの有効性

心理的安全性のもとになるのは、ヒューマン・キャピタルです。それを大切にして、どうアプローチし、いかに成長させていくか。そのためには、まず自分が変わらなければならない可能性もあります。

相当なスピードで変化していっている今の世の中は、先行き不透明で将来の予測困難なVUCA時代。10年前の成功体験は、ChatGPTのようなツールまで登場している今では成り立たないかもしれません。

それだけの変化を遂げている世の中で、自分はそのままでいいのか今一度考えてみたいものです。

変わる必要は感じているけれども、何を?という方は、まず何か実行可能なアクションプランに取り組むのも手。例えば1週間に一度、社員の強みを発見する時間を取るのです。新しい習慣を作る時間、考える時間を作りましょう。

変わること、新しい習慣を作ること、他人や変化を認めるプロセスはハードで難しいものです。その難しいものに取り組むツールだったり機会の一つが、ワークショップやセッション、トレーニングです。

心理的安全性を作るために自分に必要なコツとは何かお話ししてきましたが、前述した4つのコツも参考にしながら、ご自身に合った取り組みを始めてみてください。

心理的安全性を作るコツ
 自分自身と向き合う
 自己主張ではなく自己開示を
 信頼関係の構築
 部下の強みを承認し、対話する

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