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持続的にパフォーマンスを出す組織を作る1on1ミーティングの方法

持続的にパフォーマンスを出す組織を作る1on1ミーティングの方法

1on1ミーティングが組織に与える好影響/人間関係編

朝から夜遅くまで会社にいて、昼・夜は連れ立って食事をして……。かつてはそんな会社員も少なくなく、一緒に過ごす時間の長さに比例して、いろいろな話ができるタイミングが多くありました。

しかし、働き方改革が進み、新型コロナ感染症の感染拡大防止によるオンライン化も手伝って、社員が共にする時間が減っている昨今。わざわざ機会を作らなければ、コミュニケーションを取ることが難しくなるとともに、人間関係を築くことも容易ではなくなっています。

もちろん、業務に必要な会話は交わすでしょうし、それだけでもそれなりに信頼関係の構築が可能かもしれません。ただ、ある特定のトピックだけの話だったり、中途半端だったり、一方通行だったり。そんな状態で信頼関係はできづらいもの。業務もそれ以外のことも、話をする機会を設けることによってお互いを知り、良好な人間関係が作り上げられていきます。その“話をする機会”の一つが1on1です。

信頼関係は生き物ですから、一度築けたらゴールではありません。築き続ける必要がありますので、定期的・継続的に実施しましょう。

1on1ミーティングが組織に与える好影響/パフォーマンス編

信頼関係が上司と部下それぞれの間で個別に積み上げられていくと、部下側には組織への帰属意識が生まれます。さらに、帰属意識による安心感も。

緊張感から極限のパフォーマンスが発揮できる可能性もあります。しかし、安心感がある中でのパフォーマンスは、自分にどんなことができるか、どんなふうにしたいか……と思考の枠が広がった上でのもの。そのため、想定以上の効果が期待できます。

上司と部署内のメンバーとの間で信頼関係ができているとき、“この人が困っていたら、助けたい”という気持ちになり、相互協力も可能に。メンバー同士にも協力体制ができていきます。自分以外に目を向けられるのも、安心感があるからこそ。サポートしあう意識も芽生え、そこから発展するシナジーにも期待できます。

1on1を始める前に必要なこと

第一歩は、目的を明確にすることです。1on1を行うことで、組織内でのビジョンが明確になり、それが個々人に共有されている状態を作った上で、実現のために一人ひとりと信頼関係を構築すること。それがビジョン達成への早道になると考えているし、何よりも個々人(部下の)の目的も明確になり、成長につながるから実施するのだ、と。

信頼関係の構築だとか、上司もしくは部下と二人だけで話さなければ……となると皆、緊張してしまうかもしれませんが、部下にも上司にも組織にも、それぞれのベネフィットがあります。それを叶えるための時間であり、何を話しても大丈夫だという心構えで、自身も部下もいられるようにしましょう。

普段から短い会話をする機会を多く持ち、話しやすい文化が形成されていれば、1on1でもスムーズにいろいろなことを話せるようになり、1on1が組織に浸透しやすくなります。

世の中にはさまざまなビジネスツールがあり、例えばMicrosoft Teamsのユーザーを会議に招待する機能を使って1on1を行うこともできますが、初回は「なぜ実施するのか」を口頭で伝えてください。それが難しい場合は、個別にメールなどで連絡を。それが安心感を高めます。

1回の時間は30分でも60分でも。頻度は、高いほうが組織や個々人に何が起きているかをキャッチしやすくなりますが、経営者・管理職がどの程度の部下を抱えているかによります。直属の部下が6〜10人くらいであれば、2週間〜3週間に1回程度。私の肌感覚としては、1on1がうまくいっている方は2週間に1回という方が多いですね。

予定が決まったら、キャンセルは避けます。どうしても、というときは日程を再設定しましょう。

時間を要する1on1ですが、「やらなければいけないことが増える」とは思わないで、。チームの基礎作りができるラッキーな機会ととらえましょう。1on1は信頼関係を構築し、メンバーのモチベーションを上げ、業績アップにつながるものですから。

成功する1on1に最も必要なもの

まず必要なのは、コミュニケーション力。中でも、最も求められるのは傾聴力です。

1on1は、「聴くことが7割」と言われますが、実際のところ、話しているのは圧倒的に上司側。相手の許可が得られれば、レコーディングしてみるといいかもしれません。いかに自分が話しているのかわかります。

傾聴とは集中して聴くことです。ありがちなのは、相手が話しているときに、次に自分が何を話そうか考えてしまうこと。そうなると、自分の心はその場にはいなくなっているので、ほかのことは考えず目の前の相手に集中してください。

自己開示して他者を受け入れるオープンマインド力とフレキシブルさ、抱えている問題や課題、将来を一緒に考えられる寄り添い力と承認も必要です。そして、もう一つ。コーチング力が1on1には大きく影響します。

これらの力を磨くために必要なのは、相手への好奇心。相手の言っていることに好奇心を持たなければ、どうしても自分の中でバイアスがかかり、自らの考えや成功体験が前面に出てきて、相手の言うことを遮断してしまいます。

例えるなら1on1は、初デート。相手は何を言うのかな?とワクワクし、想定外の言葉が出てきても「この人はそれが好きなんだ」と、発見することがうれしかったりしませんか? 自分の頭の中での考えやプランだけでガチガチに固めた初デートを成功させるのは難しいですよね。

短期・長期の目標設定とフィードバックも必要

1on1は、キャリアパスを短いスパンと長いスパンで描き、それを叶える方法を一緒に考える場にもなります。そこには短期・長期の目標設定も必要。

例えば、新入社員には半年、1年、5年、10年、30年といった期間で聴くのもいいでしょう。業務に対するフィードバックがあってもいいと思います。ただし、“適切であれば”が大前提です。

逆に、部下から上司へのフィードバックがあってもいいのでは? 特に、初回の1on1が終わったあとや半年後など。このフィードバックは無記名で、簡単なものにしましょう。

Microsoft TeamsのFormsなどのツールを使い、「初回の1on1を1〜5で評価してください」「1on1のよかったところはどこですか?」「あまりピンとこなかったのはどんなところですか?」など3問くらいで、1on1を受けた側からのフィードバックができるといいですね。

1on1で得た情報はどこまで共有する?

部下と1on1で話したことは、自身の上席などとも基本的に共有しません。「だから、安心して」と話を促すほうが得策です。

ただし、進退に関わることや自分だけでは解決できない課題がある場合は別。対象者に寄り添った結果、必要であるという判断のもとに行われる、適切なポジションの人への橋渡しや相談はとても大切です。

男性社員の育休取得希望に驚いた本部長Hさんの対応

60人〜70人の部下を持つ本部長・Hさん。部下全員と半年に1回は1on1を、と取り組んでいます。その1on1で、20代の男性社員・Nさんから育児休暇を取得したいと言われたそうです。

昭和生まれのHさんは「こんな子、本当にいるんだ」と驚きました。Hさんと同世代は、同じように思う方がたぶん山盛りなのでは……。そして、「育休!? 君が?」と口から出そうに。しかし、パワハラ防止の研修で言ってはいけないと教えられていましたから、その言葉を飲み込みました。ただ、どうしたらいいのかわからない。だから、そのままNさんに聴いたそうです。

「僕としても初めてのケースだからわからないんだけれども、どういうふうにしていきたいの?」と。Nさんは、育休を取る期間や復帰時期、その間のプロジェクトの進め方、復帰後を話してくれたといいます。

Hさんの素晴らしいところは、驚いたことを驚きとして表現するよりも、「どうしていいかわからない。君はどうしたいの?」と、問いに持っていけたこと。それが成功のもとに。

育休と言われたときには、頭の中がパニックになったというHさんですが、聴いたことでNさんがきちんと考えていたことがわかりました。その結果、Nさんは男性の育休取得第1号に。

いい形で前例を作れたと同時に、Hさんとしてもハッピーな形でBさんを見送れ、Nさんも希望どおりに育休を取得。企業側にとっても育休第1号を発することができたことによって、組織の中に安心感が生まれました。Win-Win-Winの例です。

男性社員の育休取得に対する思い込みを横に置いておけたAさん。1on1に必要なスキルや知識が備わっていたといえます。Hさんに限らず、1on1に取り組む際は、難しくガチガチに考えすぎず、好奇心を持つなどできることから始めてみてください。

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