やる気はどこから生まれるか
やる気の源は、「情熱/願望/必要性」の3つと言われています。ケンブリッジ ディクショナリー(英・ケンブリッジ大学が提供している英語学習者のための無料辞典)にも記述があります。
情熱と願望は自分の内側から生まれますが、必要性は内的要因と外的要因のどちらであるかによって、やる気を維持できるかどうかに大きく影響します。
コーチングにおけるやる気の上げ方
やる気は「自分軸」と連動したものと考えます。自分軸とは自分の内側にある”芯”のことで、その方の“ありかたそのもの”のことです。
ご自身が成し遂げたいこととやる気が結びつくと、自然と情熱にあふれ、成し遂げたいゴールに向かってエネルギーが無限に湧いてきます。それが、やる気の源です。好きなことをしているときに、そんな情熱を感じたことはないでしょうか。
やる気の源をぐんぐん引き出すには、3つの方法があります。
1. やる気を失っているものと自分の関係性を見直す
2. やる気の要因が外的要因になっていたら、内的要因に切り替える
3. 自分と向き合うルーティンを作る
1. やる気を失っているものと自分の関係性を見直す
やる気を失うこと自体が、ご自身の在り方と自身の関係性が明確に構築できていないことの表れでもあります。自分の内側にある情熱や願望と物事がリンクしていないと、不安や焦り、寂寥感が起こり、落ち着かない状況になることも。
そんなときは、ご自身にとってその物事とどう向き合い、取り組みたいのか、そのことを通じて何を実現したいのか、ご自身の内側にある感情を静かに見つめてみてください。
2. やる気の要因が外的要因になっていたら、内的要因に切り替える
次に確認したいのが、やる気の要因が内と外のどちらにあるかです。
やる気の源が周囲の状況や他社の影響などを受ける外的要因の場合は、見直す必要があります。たとえば、成果を出して社内で評価されること(=出世や昇給)がやる気の源の場合、評価は自分でコントロールできないため、逆に不満が募ってしまいます。
逆に内的要因の場合は、自分の価値観やものの見方を変えることで、考え方を転換して解決しやすいので、外的要因がやる気の源になっているなら、こちらに切り替えるようおすすめします。
たとえば、仕事がつまらない場合は、どんなときにご自身がやり甲斐を感じるか考え、やりがいを感じる部分に行動を寄せていきます。やる気が出てくる場面をご自身の行動で作り出せるようになるので、やる気を感じる場面が結果的に増えるというわけです。
3. 自分と向き合うルーティンを作る
自分に問いかけ、ご自身にとって何が大事か、何が起こったときにやる気が出たか、あるいはもやもやしてやる気が失われたかを振り返る時間をもちます。具体的にはこんな行動です。
・日記を書く
・瞑想をする
・セルフコーチングをする など
忙しい毎日の中でこういった時間を取るのは難易度が高いと思いますが、継続できると、ご自身を支えるとてもパワフルなルーティンになります。
やる気が下がる原因の正体
やる気が出ないときは、無意識のセルフトークがご自身に対して働いていることが多いです。「自分は〇〇だからできない」「私にできるわけがない」など、ネガティブなトークが何かのきっかけで無意識に発動し、ご本人のやる気を下げたりしています。
ですから、やる気が出ないときは、そのきっかけやタイミングを見つけます。確認したいのは、
・いつからやる気が下がったか
・やる気が下がった瞬間に何があったか
です。どんなタイミングで下がったかがわかると、やる気を上げる解のヒントを得られます。さらに、
・やる気が下がった瞬間に感じた感情
・その感情が出てきたのはいつか
・最近同じことをがあったのはいつか
を掘り下げていくことで、ご自身のやる気がどんな条件がそろうと下がるかわかるようになります。そのきっかけがわかると、やる気が下がる前に察知して行動を変えられるようになります。
この問いをそのままにして、「やる気がなくても勢いでやろう!」を繰り返すと、常にやる気が湧かないまま、勢いがなくても無理に向き合う状況が続いてしまいます。
会社を成長させたい経営者がやる気を上げるためにしたこと
やる気のない経営者はほとんどいません。現在進行形で行動して結果を出していても、さらにやる気を上げたい方が多く、ある経営者Rさんもそうでした。Rさんは会社をさらに大きくするため、セッションにいらっしゃいました。
やる気は数字で測れません。計測できるのは、その方がとった行動と結果だけ。ですから、コーチングでやる気をどう考えるかというと、行動をどう作っていくかの視点でフォーカスします。
Rさんが会社をより大きくするには、当然今より広い視野とそこからの行動量が必要です。その源は、やる気。やる気を膨らませて行動を増やすには、今している行動がどんな理由で起こっているか分解すると、行動量が上下するタイミングやきっかけがわかるようになります。
そこで、Rさんにご自分を振り返っていただくグラフを書いていただきました。グラフを使って対話を重ねていくと、「そもそも自分はなぜこの事業をやっているのか」という根幹を問うところまで行ってしまい、ご自身の出発点まで戻って考えることになりました。
わかったのは、Rさんが「人のマネジメントが嫌い」な点でした。対話から、この点が見ええてきたときには、ご本人もよもや「人のマネジメントが嫌い」が出てくるとは、最初は驚いていらっしゃり、そして、苦笑いしながら、ご自身の本音を承認し、受け入れられました。
当初よかれと思ってメンバーの自主性に任せて会社経営を続けていたところ、コミュニケーション不全に陥り、不健全な状況が組織全体に起こっていたのでした。
ご自身の本音を理解し、受け入れた今、このままにはしておけませんので、Rさんがどんな形なら組織としてコミュニケーションを円滑にできるかを一緒に考えました。Rさんはご自身の直下にマネジメントが得意なメンバーを数人を置き、組織全体のマネジメント体制を見直しました。
結果、Rさんと社全体の意思伝達がスムーズになって人の配置も適切な形に整い、組織文化はオセロのように少しずつ変わっていきました。もちろん、Rさんのご希望どおり、会社は今も成長を続けています。
組織文化の成長サイクルが回り始めた頃から、Rさんには社外取締役や理事長職のお声がかかるようになり、今は数社でご活躍されています。
諦めぐせのある学生がもっていたセルフトーク
留年がかかった大学生がお母さまの依頼でおいでになりました。彼は、Jくん。とても頭のいい学生さんですが、大学での勉強がつまらないそうで、留年がかかっていても、勉強に身が入りません。退学もやぶさかではない勢い。
Jくんに色々話を聞いてみると、「僕は諦めぐせがある」と言います。物事をやり切る前になんでも諦めてしまうそうで、長く続けられることがないのだとか。
これは、わかりやすい「セルフトーク」です。セルフトークは簡単に言うと自分に対してかける言葉のことです。Jくんはご自身に対する認識が「僕は諦めぐせがあるから○○できない」となっていて、何かあれば自分で自分に諦めるよう行動を促してしまいます。
そこで、言い方を変えることをJくんに提案しました。「諦めぐせがある」が使いたくなったとき、「潔い」と表現してみるのはどうかと。幸い、Jくんはその表現が気に入ったようでした。
Jくんのように、行動に影響を及ぼしやすいセルフトークをもっていると、やる前から気力を失いやすくなってしまいます。やる気を起こす前に、ご自身が何かを諦めたり、行動を取りやめたりするタイミングでどんなセルフトークをもっているかを観察してみると、やる気を阻害する理由を見つけられることもあります。
やる気が思うように出てこない方は、こちらのアプローチ方法も取り組んでみてください。
好き・得意から生まれるエネルギーの強さを利用する
ところで、みなさんは仕事を進めるとき、好きな仕事と苦手な仕事、どちらから取りかかりますか?
セッションでクライアントとお話ししていて気づくのが、みなさん苦手な仕事から取りかかることです。タスク整理や仕事の進め方のノウハウが流行ったとき、やり残しがちな苦手な仕事を先に片づければ、タスク漏れがなくなるという理由でその順序が流行っていましたが、私がおすすめしたいのは、逆です。
好きな仕事や得意な仕事から取りかかることを、おすすめします。
好きな仕事がサクサク楽しく進められるのは、ご理解いただけると思います。得意な仕事も進めるほどに楽しい気持ちが高まり、自分が元気になりますよね。その波に乗った感覚がある状態で苦手な仕事に取りかかると、エネルギーが満ちている状態なので、やってみると意外と短時間で片づけられたり、妙な達成感を感じられたりします。
まとめると、こうです。
・好きで得意な仕事を先にする……エネルギーが沸き上がりやすい
・苦手なことに取り組む……普段よりエネルギーを消耗しやすい
ちょっとしたことですが、ご自身の内側でエネルギーが湧く仕組みをうまく使って、やる気をコントロールする小さなハックです。日常業務の中でぜひ試してみてください。